弁護士先生と恋する事務員
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その日のお昼休み。
私は商店街で夕食のための買い出しをしていた。

炊飯器がないから小さめの土鍋を買う。
これでも3合炊けるというから十分だろう。

次に向かったのが魚屋さん。
今日のメインは魚料理にしようと決めていた。


店先には丸いザルの上に、今朝とれたばかりの新鮮な魚介類がたくさん並べられている。


「はいはい、見てって買ってって。今日のおススメはアジだよ~。アジにカツオにスルメイカ!車エビもおススメだ。」


魚屋のおじさんの独特のだみ声に購買意欲をそそられる。


(今日はアジがおススメか。)


私は顎に手を添えて、店先でしばし考える。

(先生はカレイの煮つけを作ってって言ってたけど、先生と安城先生、若い男の人達だったらアジのフライもボリュームがあっていいかもね。どうしよう…)


「はいはい、そこの美人なお姉さん!アジ美味しいよー。フライにでもしたらビールのつまみにぴったりだ。」

「へ?」

(美人なお姉さんて…私?)

「えへへ…おじさん、アジ3枚ちょうだい!」

「はい、まいど!」


ついつい乗せられて、買っちゃった。
お金を渡して商品を待っていると


「そこの美人なおねえさん?」


耳元で低い声が響いて、思わず「ひゃあ!?」と飛びのいた。

「せ、先生!」

いつの間にか先生が私の横に立っていた。
大きな背中をかがめているから、振り向いた瞬間顔が近くて二度びっくりしてしまった。


「詩織、顔がニヤけてるぞ。」

「……っ!」


からかうように前髪をくしゃくしゃと撫でられる。
もう、こんな時に見られてるなんてタイミング悪いんだから…。


「そ、そうだ。今日はアジがおススメらしいので買っちゃったんですけど…」
「詩織の作ってくれた料理なら何でもいいぞ。」


間髪いれず、先生が答えてくれる。


二カッと笑ったその背後から

真昼の日差しが降りそそいでいる。


そんな先生がまぶしくて


私は思わず目を伏せた。

 
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