白紙撤回(仮
ぽつりぽつりと人とすれ違うと会社の事が頭に過った。

この状況で出勤は無理だろう。
出勤するにしてもスーツはグチャグチャだ。
スーツを取りに家に戻っても恐らく遅刻。
会社を休むにせよ死んでる携帯では会社に連絡の仕様もない。

無断欠勤するか?
公衆電話から連絡か?

寝不足と空腹が考える力を奪う。

面倒くさい。どうせクビになるんだ。

そう言えば市ヶ谷は何の仕事をしてる奴なんだ?

隣を歩く市ヶ谷の様子を窺うとそれに気付いて奴は俺に尋ねた。

「君、会社は?今日は休みって訳でもないよね」

「……あんたどうせ俺を行かせる気ないだろ」

「どうかな……徹夜して出社して。君が能率よく仕事出来るとは僕には思えないけどね」

「は?……行かせる気ないだろ」

「どうせ辞めるんだろ?」

平然と前を向いたまま言い放たれ、俺は黙るしかなかった。
それから無言のまま俺達はコンビニの自動ドアを通過した。
店内には店員が居るのみだ。

市ヶ谷は迷いなくATMに向かった。
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