シュガーレスキス

1-3 ツンに浮いた噂

「だから……何もないよ」
「どうだかな」

 聡彦から如月さんとの仕事ぶりをそれとなく聞かれ、返事に困る。

「あの人仕事中はあんまり話さないし。失敗しないか注意するだけで精一杯だから……それだけだよ」

 営業の仕事に慣れるのに必死で、あまり如月さんがどうだとか考えていない。
 ただ、思ったより鬼なわけじゃなくて、それなりに仕事がうまくいくと褒めてくれたりする。
 もっと頑張ろうと思わせる人だな……っていうのは何となく感じている。

「外から見てる分には何が起こってるのか、何を話してるのか全く見えないからさ」

 聡彦は彼と特別何かあるんじゃないかって気にしている。
 でも、ダイレクトには聞いてこなくて、夜にお互い肌を合わせている時に、それとなく伺うっていう感じだ。

「聡彦に美人との噂でも沸いたら、私も質問攻めにするからね」
「そんなん流れようが無いって……」

 こんな感じで、専ら私は心配される日々だった。
 企画での聡彦は、そりゃあ凛々しく働いていて、私は仕事する彼もやっぱり素敵だなと惚れ直しているところだ。
< 148 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop