シュガーレスキス
■第2章(2話)

1-1 もしも……

 晴天。
 夏空に入道雲が浮かび上がり、今日の午後も相当きつくなる予感がしていた。
 アスファルトに水をまく作業があって、昼休みになると女子社員が数名当番で駐車場に水をまく。

「こんなんで気温下がるのかなあ」

 一人の女性が文句を言う。

「だいたい中で冷房かけすぎなんだよねー。クールビズとか言って男性社員皆スーツだし!」
「そーだよね。いくら通気性が良くたって、この暑いのにジャケットっていうのは見苦しいほどに熱いよね!」

 私はその会話を聞きつつウンウンとうなずいていた。

「おーう、そこの女ども。うるせーぞ。さっさと水まけ、水!」

 いきなり俺様口調の如月さんが文句を言っていた女子社員の頭をくしゃくしゃとさせて食堂の方へ歩いて行った。
 今日は午後から彼と外勤予定だ。
 あの人は私と二人きりの時以外は、ああいう変なキャラになっていて不思議だ。

「如月さんに頭触られた!!ぎゃーどうしよう」
「なんか渋いよねーあの人。男の余裕を感じるっていうか。色気があるっていうか」

 あんな態度なのに、結局彼は女性から好感を持たれる。
 何をやっても一本芯が通ってるから、とにかく安定した男の余裕が見られるのだ。
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