シュガーレスキス

1-4 プロポーズ

 意を決して、聡彦に会う事にした。
 如月さんに迷惑かけるのも、いい加減止めなくては。
 妊娠が分かってから10日経過した土曜日、私は聡彦をお互いに知っている喫茶店に呼んだ。

「やっと会ってもらえた」

 そう言って、聡彦は柔らかい笑顔を見せた。
 全くの他人とは思ってないみたいで、やっぱり多少私に対する懐かしい気持ちがあるみたいだ。

「何も注文してないの?」

 席について、私が水しか飲んで無いのを見て彼はそう聞いてきた。

「あ、うん。聡彦が来てから注文しようと思ってて」

 本当は彼がちゃんと来てくれるのか心配で、注文表を見たままボーっとしていたのだった。
 私は久しぶりに見る聡彦の元気な姿を見て、それだけでホッとしていた。
 本当に……命に関わるような事にならなくて良かった。

「あのさ、俺……後藤さんの事何て呼んでた?」

 注文を終えて、向かい合ったとたん彼はそんな事を聞いてきた。

「携帯に君の番号が“レイカ”って入ってたんだけど……何あの名前?」

 それを聞いて、私はちょっと笑いそうになった。
 聡彦が私の番号をコスプレのキャラ名で入れてたっていうのは、相当意外だった。
 オタク趣味を時々からかっていた彼だけど、そんな私のオタクの部分も彼は愛してくれていた……。
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