シュガーレスキス

1-2 手紙(SIDE聡彦)

SIDE 聡彦

「手紙読んでくださいましたか?」

 出社したと同時に沢村さんが声をかけてきた。
 手紙?ああ、あれか。

「ごめん、失くした」
「え?手書きの目立つ封筒でしたけど……どこで失くしたんですか?」

 彼女から手紙をもらうのは、これが最初ではない。
 ラインが外れてからというもの、仕事の相談という名目で何故か手書きの手紙が渡される。
 内容は確かに仕事に絡んでいたものだけど、返事に困る。
 これまでは、手短にメールで仕事の指示だけ出すようにしていた。

 でも、この前もらったのは本当に失くした。

「沢村さん、もう俺から卒業したら?ある程度仕事は一人で出来るんだし」

 彼女を教える役割はもう終わっている。
 何でこんなにダラダラ引っ張られないといけないのか、正直少しイライラした。

「そうなんですけど。この前の手紙にはそれとは別の話を書いてあったんです」

 そう言って、彼女は暗い顔をして俯いてしまった。

 面倒な子だなあ。
 菜恵が何か嫌がらせしたとかいうのも、何だか嘘くさい。
 ちょっと演技してるっていうか……俺の気を引こうとして、本来の自分じゃない状態を見せている気がしてしょうがない。
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