シュガーレスキス

2-2 ツンツン男

「はい」

 私からのコールだって分かってるのに、ぶっきらぼうにそれだけ言って聡彦が電話に出た。

「あ、私。携帯に連絡くれてたんだ。今までそういうのなかったから全然チェックしてなくて。ゴメンね。何か用事あった?」

 なるべく王子の機嫌を損ねないよう気を使う使用人のように、私は控えめにそう言った。
 すると聡彦はしばしの沈黙の後、

「今からそっち行くから」

 とだけ言って、一方的に通信を切ってしまった。

 明らかに怒っているっていうか、ムカついているという雰囲気だった。

 聡彦のアパートから私のアパートまではチャリンコで15分程度しか離れていない。
 歩くと40分ぐらいかかちゃうんだけど、多分彼はチャリで来るはずだ。
 車の運転は出来るけど都会では必要ないから、持たないと言っていた。
 こだわり派の彼だから、どうせ車を持つなら憧れているものがあるみたいで、それが買えるぐらいのお給料になるまで待っているみたいだ。

 携帯の通信が切れて10分ほどで玄関のチャイムが鳴った。
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