あの夏の季節が僕に未来をくれた
そのうちわかることだけど、俺は佐伯に弟のことを話したことがない。


そんなことで弟に興味を持たれたり、逆に同情されたりするのが嫌だった。


佐伯が興味本意にそれを探ってくるやつだなんて思ってなかったけど。


自分だけを見てくれる初めての友達なだけに、それ以外の情報をいれたくなかったのかもしれない。


やっと父や母とも普通に話せるようになったのに、俺のあいつへの嫉妬や不安は拭えないんだなって。


そんな自分が嫌になったけれど。


きっと今でも一緒にいれば、佐伯は弟の友達だったんじゃないか……とか。


弟の人柄はきっと佐伯にも通ずるものがあって。


似ている部分や重なる部分があるだけに、俺よりももっと深く友情を育んでいたんじゃないかなんて。


もう絶対にあり得ないことだってわかっていても、自分の中の不安が拭えない。


そんな風に思うこと自体があいつのいいとこや人間性を認めてるってことなんだろうけど。


それでも長年自分に自信が持てなかった俺は、そんな弟を脅威に感じることしか出来なくて……


まだまだ自分はあいつの呪縛から逃れられていないのだと思い知らされた。


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