あの夏の季節が僕に未来をくれた
兄貴は生きてるじゃないか!


なんだって出来るだろう?


俺みたいに死んじまってからじゃ、彼女を慰めることさえ出来ないのに……


体なんてただの器に過ぎない。


変わろうって思えばどうにでも変われるんだ。


器を無くした俺は、もうどう変わることも出来ない。


今のままの俺でいるだけだ。


だから兄貴には後悔しないように生きてほしいのに……


それを伝えようとして、思わず本音を漏らした。


《明らかに卑屈になってるくせに》


しまったと思った時にはもう、兄貴は心を閉ざした後だった。


もう呼び掛けても聞こえていない。


いや、聞こうとしてないのかもしれない。


それが逆に俺の言葉が真実であることを物語っていた。


そして兄貴はずっと俺を遮断し続けた。


まるでお前の言葉なんか聞きたくないとでも言うように……


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