ヤンヤンデレデレ
【最初で最期のワガママ】
夜、いつものように寝入る二人。春の雨がやけに耳障りに思えたのは、相手の声がよく聞こえなかったため。
「何か、言った?」
鉄で繋いだ手を握る。五指を絡ませ、手のひらを擦り合わせた。
「思ったことがあるんです」
言いにくそうな声だからこそ声量は小さい。雨音に掻き消されてしまうほどの、躊躇いを持つ誉と額を合わせた。
「何でも言って。聞くから」
――誉の声以外、聞こえない方がいい。
そう思えるほど、自身は誉の言葉を全て聞き、受け入れられる。
合わせた額を離す。少し間を置いたあと、念願たる彼女の声を聞く。