Dead Flower









「ねぇ、今回もまた来るの?」

「来なくても来るよ」

「もうしょうがないよ。
いつ終わっても花が咲いたら終わりだよ」

「今度はアイツかな?」

「アイツかあ」

「誰だっていいよ
……どうせ消えるならさ」







〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・

入学から2日が経った。

私は楽しい学校生活を送っていた。

毎日笑って、友達とふざけあって、笑顔で過ごした。

そんな、ある日のこと、


「………」

今日、隣の席に男の子が座っていた。

吃驚して、少し硬直していたが、驚いているのはおそらくこっちではなく、向こうだ。

いきなり隣の席に女の子が座っていたのだ。

「………」

「………」

男の子は何も言わない。

私も、話す気になれない。
チラッと横を見ると男の子の横顔が見えた。


その横顔に息を呑む。

さっきはよく見えなかったが、横から見るとその綺麗な顔立ちがくっきりとわかった。

早くも心臓は音を大きくたて始めた。

「―――…何か用?」

いきなり話しかけられて更に大きく心臓がなった。

「ぅいッ!?…あぁっ……や…」

あああ。明らかに気持ち悪い女の子と思われた…!

「お前…、転校生?」

「え?はあ……」

「………」

「………あの」

「あ?」

「あっ、いや…」

「………」

「何でもない…です」


男の子は私をじっと見、ぷいとそっぽを向いた。





「ねぇ、琴ちゃん」

「ん?なあに?」

さっきの男の子が気になり、琴音に訊くことにした。

「あの、人ってさー……」

「あ〜、逆井?
あはは、まさか惚れちゃった?」

「ッ!…ち、違……」

言いながら顔が熱くなるのがわかる。

「逆井 祐哉。
あまり来ないんだけどね。
ちょっと態度悪いけど、いいヤツだよ」

「へぇ…」


男の子……逆井は静かに本を読んでいた。


「そういえば、琴ちゃん」

「今度はなあに?」

「このクラスって欠席多いけど、なんで?」








――――一瞬、琴音の顔つきが変わった。

本当に一瞬、睨むように私を見た。

あの時のような冷たい瞳。





「琴ちゃん…?」

「ああ、わかんない。
先生も連絡受けてないらしいんだよね」

「そう…なんだ」











「アイツ、なんか気づいてる?」

「うん」

「多分、もうじき」

「そうか…」


―――琴音は不気味に笑い
「恋の相談なら、私に言ってね。叶えてあげるから」
と言った。




〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・


私が転校してから、2ヶ月が過ぎた。

毎日学校が楽しかった。

琴音はあれからあの優しい表情を崩してはいない。


ただ、時折、ぼーっとして呼んでも返事がない時があった。

欠席者もまた増えた。



――そんな、ある日のことである。







学校から帰る途中、学校に宿題を忘れたことを思い出し、急いで取りに帰った。

下校時間からは1時間が経っていた。

暗い廊下を進み、教室まで足を運んだ。



「―――…あれ?」


教室の電気がついていた。

今の時間に人が…?

そーっと近づくと少しだけ会話が聞こえた。



「……から、…んだよ?」

「……っ」

「どうするつもりなの?」

「だって、私はただ…、華が私を……たから…でも、私のせいじゃないっ!!」


女の子と女の子の会話だ。

一体、何の話しをしているのか。


「へえ。私が死んだのは誰のせいでもないって?」

「そ、そうだよ!」

「……違うよ!
あんたも原因なんだよ。
だってあんたが……だから、怒ったりするから、だから華は……追い込まれて、お前だって悪い!
お前も悪い!!ほかだけじゃない!!

……私は、ただ、謝って欲しかった。
でも、もう仕方ないかな…。
だって貴方、知らないふりするんだもん。
被害者になってるもの。
加害者だよ、容疑者だよ、お前はよォ!!!」


「い、…嫌……。ヤダ…やめてよ!
お願い…!琴音ぇ!!」


「私は予告したよ?
お前が悪いんだよぉ?
あははは…」

「や、あ、あああッ!!!」




何…?
今の会話は何…?

恐怖で身体が硬直する。


華……!?
何?何、なに、ナニ?

琴音?
女の子と何していたの?

こと……ね………?










次の日。

私は宿題を忘れ、クラスの女子の欠席が1人増えた。



私は琴音が怖くなった。

あの日―――。
女の子は確かに「琴音」、と言っていた。

それにたまにフインキが変わったりするのも関係があるのか。


そして、「華」って?

このクラスに華という名前の子はいない。



じゃあ、誰――…?


昨日まで学校に来ていた子の机を見ると、その机の隅―、誰も気づかないような所に…、





血痕が付着していた。



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