君だけの星へ

隠れたラブレター



『自ら苦しむか、あるいは他人を苦しませるか。そのいずれかなしに恋愛というものは存在しない。』


            アンリ・ド・レニエ



   ◇ ◇ ◇



「おじいちゃん、おはよー!」

「ああ、世莉ちゃん」



居間の方から姿を見せたおじいちゃんは、笑顔で「おはよう」と返してきた。

それを見たわたしも、笑みを浮かべて玄関をあがる。

まだお店を開けていない時間だから、今朝は反対側にある自宅の玄関からの訪問だ。



「山形のおばさんから、りんごもらったんだ。いっぱいあるから、おじいちゃんにもおすそ分け持ってきたの」

「そうかい。わざわざありがとうね」



大きめのレジ袋につめたりんごを手渡すと、おじいちゃんはうれしそうに中身を見ながらお礼を言った。

その様子に、わたしまでうれしくなってしまう。



「いいよいいよ。それじゃあわたし、学校行くね」

「ああ、ちょっと待って世莉ちゃん」

「へ?」



思いがけず呼び止められて、かばんを右肩にかけ直しながら振り向いた。

おじいちゃんは何やらタンスをごそごそ探り、あったあったとまたこちらに近づいてくる。
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