君だけの星へ
Star.3

彼とコペルニクスと



『多くのことをなす近道は 一度にひとつのことだけをすることだ。』


              モーツァルト



   ◇ ◇ ◇



「おい、なんだよコレ。地球は公転じゃなくて自転してるんだっつーの」

「うぅ……」



あの出来事の後、次の授業の日。

桐生さんの態度は、見事にいつも通りでした。



「あぁん? コペルニクスが提唱したのは地動説だろが。天動説はプトレマイオスだ!」

「すすすすみません……!」

「『コペルニクス』と10回言え! その後『地動説』と100回唱えろ!」

「あわわわわわ」



ていうかむしろ、今日教えてもらってる天体の分野は、教え方がいつにも増して厳しいような気がする……。

やっぱり、大学時代に自分が学んでいたものだからこだわりがあるのかなぁ。



「次、さっさと解く!」

「はいぃ……!」



今日はずっとこんな調子だから、こないだのことを思い出してしまう暇もなくて。

厳しくされてよかったような、悪いような……なんだか、複雑な気分だ。
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