君だけの星へ

気付いた感情



『見えないと始まらない。見ようとしないと始まらない。』


            ガリレオ・ガリレイ



   ◇ ◇ ◇



「やだもう、全然わかんなーい!!」



ブリックのピーチティーを飲むわたしの傍らで、しばらくの間数学の教科書とにらめっこをしていた有紗。

だけど耐えきれないといった様子で突然そう声をあげると、両手を机に投げ出し足をばたつかせた。



「ピタゴラスの定理なんてどうでもいいっつーの!! 足す引く掛ける割るができりゃあ人生やっていける!!」

「あはは……」



つい先ほどまで彼女が格闘していたのは、前の時間の授業で課題にされた数学の問題だ。

先生によれば次の授業でその答えあわせをするらしく、そして今までの流れ的に有紗が当てられる予定らしい。

そんなわけで普段ならば宿題をやってこない彼女も、今回ばかりはまじめに取り組もうと思っていたみたいだけど……。

やはりというか途中で投げ出してしまった有紗に、わたしは苦笑をもらすことしかできない。



「まずさ、この米つぶみたいなのを『シータ』って読む時点で理解できないんだよね。意外にカッコイイなおまえ!みたいな」

「いや、関係ないし……」



シャーペンで教科書をつつきながら、有紗はぶつぶつ文句を言う。

そんな彼女につっこみを入れ、机に広げられているものたちを覗きこんだ。
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