【短編】大好きだとか、内緒だし。
大好きだとか、内緒だし。
 
あ、まただ。

授業中、休み時間、お昼休み、放課後……ふと視線を感じてそちらを見てみれば、そこには、必ずと言っていいほど諸岡君の姿がある。

今もまた、授業中、ちょっとよそ見をしていたら諸岡君と目が合い、慌ててそらされた。


「ちょ、つぼみ、先生に指されてるって!」


ここのところ、ずーっとだし、一体なんなんだろう……なんて悠長に考えていたら、後ろの席の紗英に背中を叩かれ、ふっと現実に引き戻されたあたしは、弾けるように席を立った。


「あわわっ、聞いてませんでした!」


とたんに目に入る先生のなんとも言えない微妙な顔と、どっと大きな笑い声に包まれる教室。

うー、やってしまった……。


「春田さん、あなた最近、ずっとそうじゃないですか。集中力が足りていませんね」

「す、すみません……」

「気をつけてくださいね」

「……はい」


先生は、注意をそれだけに留め、すぐに授業を再開したのだけれど、次の授業では集中的にあたしを当てる、と言い、予習をしっかりしておくようにと、ため息をもらしながら釘を刺す。

まったく、災難だ。

英語は特に苦手科目だっていうのに。
 
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