片恋

「子供じゃん、コトコ。」

「亮介には言われたくないんだけど。」

いつも通りに軽口で返したら、
亮介は真面目な顔で続けた。

「なんでお前、俺には年上ぶるかなあ?

 いっとくけどあいつ、シュウには
 コトコが言うみたいな子供扱い、しないぜ?」


「・・・シュウ君よりコドモですから。」

「シュウがそれを求めてないから、だよ。」

また、いつもの亮介の、
変わった言い回しのまわりくどい揶揄が
来るのかと思ったら、

今度はちゃんと言い足した。


「いいんじゃね?
コトコみたいに優しくされたい奴には、
優しくしてくれるし。

・・・俺はあいつと違うから、
俺が・優しくしたい奴にしか、優しくないし、
嫌いな奴は、とことん嫌うけど、な。」

私の顔を見ずに、どこか独り言のように呟く。


「・・・それを子供といわずになんというの。」

どう答えていいか分からずにそう言うと、
ぶはっと、横を向いた亮介が吹きだした。

「珍しく鋭いじゃん・・・」



笑いながらこっちに向けられた瞳を、

逃がさないよう、正面から見据えた。


「どうして教えてくれなかったの?」


亮介は中途半端な笑いをはりつかせ、

マズイ、という顔になる。


< 34 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop