片恋





しん、と凪いだ水面に
落ちて



音もなく、
波も立てず、

のまれて沈み込んでいく、




そんな幻影を見た。


不意に浮かんだ自分の想像に
ぞっと身震いをして、
おそるおそる顔を上げると、



暗い水底と同じ色をした瞳が、

私をのぞきこんでいた。




「いいの?」

「・・・え?」



感情を含まない、無機質な声に、

私は必死に目を凝らす。



遼平君の瞳に透けて
みえるもの。



「ほんとにいいの?」



なにが、と尋ねようとして
目を向けた先に遼平君の瞳はなく、

彼の口が私の頬をかすって、
耳元で囁いた。




「しらないよ。」

「え?」




しらないよ、



なにを?




彼の声が波紋のようにいくつも広がって、


なんども頭の中で繰り返し囁く。




しらないよ、




なにが?






抱きしめられて
もう見ることはできないけれど、


遼平君の瞳の中で、

一瞬 揺らめいた

あれは、

・・・何?



しらないよ、



あれは、



  ・・・なに?


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