黄昏に香る音色
「お前と俺は、似すぎている」

啓介は、睨む和美を真っ直ぐに見据えた。


「あたしと、啓介の音が絡んだら、誰にも負けないわ。少なくても、こんな国では!」

和美は、声を荒げた。

「お前も、アメリカにいくつもりか?」

啓介の言葉に、和美は少し冷静さを取り戻し、

「アメリカ…小さいわ」

遠くの虚空を睨んだ。


「俺は、お前とは組まない」

啓介はきっぱりと言い放った。


「こんなに合ってるのに!なぜよ」

啓介は、バーボンを飲み干すと、席を立った。

「お前とは…確かに、すばらしい音が生まれる。表面的にはな。だが、俺達の音は…だめだ」

「どうして!だめなのよ!」

「俺とお前が、音楽をやってる理由だ」

啓介は、伝票を取ろうとした。

それを、和美は制した。

「やめてよ。そういうのは嫌い。あたしが誘ったのよ」

啓介は、和美を見つめ、

舌打ちすると、伝票を和美に返した。



そのまま…出ていく啓介の背中を見つめながら、

「あんたの音は、誰にも渡さないわ」

和美は、グラスを握り締めた。
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