黄昏に香る音色
伝えたいこと
あれから、何日か過ぎた。

音楽祭のポスターができあがり、学校のいろんなところに貼られている。

最初はあまり、盛り上がりはなかったが、

連日ブラスバンド部が、グラウンドのそばで、PRの演奏を繰り広げ、

少しずつ浸透し始めた。

決定的だったのは、

デビューアルバムを、ついにリリースすることになった和美が、

テレビの歌番組で、自分も参加することを告知したことだ。

ファンが、殺到することになった。

もともと、タダだったチケットがプレミアが付き、

会場となる体育館は、

使う予定がなかった2階席まで、使用することになった。



音楽祭は明日。

体育館では、参加する者達がリハーサルをしていた。

当日は、審査員もつき、点数で競われる。

参加するのは、全部で18組。

くじ引きにより、

軽音部は、

一番最後に、なってしまった。

「和美さんは?」

里美の問いに、

明日香は予定表を見たが、

載っていない。

「たぶん…一番最後か、一番最初だろう」

滝川がこたえた。

「それより…うちは、リハやらなくていいのかい?」

心配そうな滝川に、

明日香は、笑顔でこたえた。

「はい。新鮮な気持ちで、新鮮な演奏を、聴かせたいんです。参加者にも」

明日香は、体育館を見回した。

音の響きはわかった。

後は、

当日、ここで、

演奏するだけだった。
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