黄昏に香る音色
一曲目が終わる。

ギターも歌も、完コピーに近いけど、

幸子の独特の声が、オリジナルを感じさせた。

予想外のうまさに驚いたのか…先程と、打って変わって、拍手が激しい。

幸子は、頭を下げた。

もともと口下手な幸子は…どう対応していいか、

わからない。

紗理奈ではなく、素の幸子にもどっていた。

屈託のない笑顔を浮かべる。

ちらっとゆうを見ると、

ゆうも微笑んでいる。

額に汗を、いっぱいかきながら。


2曲目が始まる。

フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーンだ。

これは、アレンジを少し変え、

オリジナルにあったボサノヴァ感を強調させた。

幸子の声は、伸びやかだ。

どこまでも飛んでいきそうだ。

緊張していたゆうも、目をつぶり、

幸子だけを感じていると、リラックスできた。

(俺は、こいつを支えていきたい)

ギターを弾きながら、

ただ幸子のことだけを、思っていた。

コードや演奏に捕らわれずに。

ずっといっしょにいたいと、願いながら。

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