ヒミツの恋【短編集】
『今までは真由美とキスしたくて何かと理由つけてご褒美って事でしてたけど…、今は何も思い浮かばないんだ…』





困った顔して言う渉に思わず笑みが零れる。





馬鹿ね…。“俺のネクタイつけてくれたご褒美”とか理由なんて、考えればいくらでも思いつけるのに…





『真由美とキスしたい…それじゃ…ダメかな?』





「ダメじゃないよ…。そうやってはっきり言ってくれた方が嬉しいもの…」







答える私に渉も笑みを浮かべて、そっと唇を重ねてきた。






渉の唇はやっぱり私の唇より少しだけ冷たく感じた。






唇が離れて私を見つめて、首を傾げる。






『…どうしてまた泣くの?』






ポロポロと流れる涙を渉の指が掬い取る。





「…嬉しくて…。渉にまた触れられる事が…渉の側にいれる事が嬉しくて…ッ…夢…じゃ…ない…よね?」






そう問いかけた私の唇を渉の唇が勢いよく塞いだ。
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