あの加藤とあの課長
「あはははははっ、噂通り似た者カップルなんだね! 公私混同しない辺りとか!」



豪快に笑った課長さんは、「ありがとう」と言って仕事に戻った。


最近こう言われることが多くなったけれど、実際そうなのか首を傾げるばかりだ。

確かに仕事中はそうかもしれないけれど、プライベートでは完全に違うと思うし。


それより…、今は仕事仕事!



「課長、どうぞ。」



書類を届けに行ったついでに給湯室でコーヒーを淹れて戻ってきた。

ちなみに私のはココア。


マグカップをデスクに置くと、課長は私に目もくれずに「サンキュ」とだけ言った。


課長のコーヒーはいつもブラックで、正直香りだけでキツいこともしばしば。

だけど、それも私の仕事になっている最近。



「陽萌っ、定時!」



今日は久々に晋ちゃんと呑みに行くんだ。



「今行くっ。」



急いでポニーテールにしていた髪を下ろして返事をした。



ここ最近忙しかったし、いろいろと立て込んで晋ちゃんとの時間がなかった。

生渕さんも晋ちゃんならと許してくれて。



「課長、お先に失礼します。」



そう言った私の手の甲に、付箋を張り付けた生渕さん。

不思議に思って見ると、そこに書かれた文に思わず顔が綻んだ。


『いってらっしゃい、遅くなるなよ。あと、今泉だからって気を抜きすぎないように』


生渕さんを見ると、何事もなかったかのように仕事を続けていた。
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