あの加藤とあの課長
源に荷物を預けて増田ちゃんと2人、トイレに向かった。



「で、どしたの?」

「…私、今泉さんが好きなんです。」

「…うん。」



送別会のとき、増田ちゃんが晋ちゃんと帰って行った時点で気付いてはいたけど。



「…私、送別会のときに告白して振られたんです。」



驚いて目を見開くと、増田ちゃんはふっと息を吐き出した。

まさかそこまでことが進んでいたなんて。



「でも私、諦めません。頑張ります。」

「…うん、頑張って!」



どうして増田ちゃんは私にこの話をしたんだろう。

きっと立ち位置的にすごく言いにくかったに違いない。



「…まったく、なんで私が好きになる人は皆加藤さんのことが好きなんですかね。」



と苦笑した。

そうだった、増田ちゃんは源の元カノだった。



「…さっきの課長の顔、あんな幸せそうな顔初めて見ました。加藤さんのことが大好きなんだって顔が語ってましたよ。」

「嘘!」



恥ずかしさに慌てると、増田ちゃんは意地悪く笑った。



「さすがに寂しそうでもありましたけど…。…加藤さん、距離なんかに負けないでくださいね。」



「うん」と頷くと、少し安心したように、増田ちゃんは微笑んだ。
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