あの加藤とあの課長
電車を乗り継いで、互いに疲れているからということで近場のコンビニで夕飯を買って家に向かった。



「社宅って感じだな。」

「そうかな。」



そりゃ源のマンションに比べたら古いけど…、中かは言うほどではない。



「一人暮らし、平気か？」



心配そうな源の表情を見て、思い出しているであろう記憶を振り払うように笑った。



「大丈夫だよ。」



たぶん、ここまで平気なのは、隣人が恵也なのはすごく大きいと思う。

元彼とはいえ、信頼できる人であることには変わりない。


部屋の前に着き鍵を開けていると、隣の部屋のドアが開いた。



「あ…。」

「おぅ。」



互いに見つめ合ったかと思うと、そのまま睨み合い出した。



「噂の彼氏か？ “陽萌”。」



“陽萌”の部分をやたら強調して言うから、私は目をしばたかせながら頷いた。



「あ、あのね、大阪支社で一緒に高杉課長の補佐をやってる、三富 恵也。」

「元彼です、高校が同じやった。」

「ちょっ、恵也！？」



突然のことに私は戸惑いを隠せず。

源の放つオーラも目に見えて不機嫌なものだった。


けれど、想定外なことに、源は笑ってみせた。
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