あの加藤とあの課長

君の隣私の居場所

あれから数週間が経った。

久々の空気に足が震えるのをグッと堪えながら、ホームにヒールの音を響かせた。


今日から3日、私は東京に滞在する。



「本社なんて、なんか緊張するなあ。」



隣で朗らかに笑う部長は、本気でそんなことを言っているのか疑わしい。


キャリーを引きながら、東京駅の構内を歩く。

新幹線に乗って帰って来たそこは、約2ヶ月前とさして変わらないのに、なぜだか違う場所に思える。



「それにしても、よかったんでしょうか、私が同行しても。」



今回、本来なら部長だけが来るはずだったものを、最初だからと私が同行することになった。



「構わんよ、たぶん。」



豪快に笑い飛ばしてくれるけど、私の不安はなくならない。



「勝手は加藤くんのが知っとるしな。」

「そう…ですかね。」



今回行われる会議は、他の支社からも部長クラスが集まってくる。

本社からは課長も出るのだが…。


私は課長補佐だから、会議よっては出たことがない。要するに、ほとんど役には立たない。

役に立っても電車の乗り換えとか社内の案内とか、精々道案内程度だ。


だから、私はこの同行の必要性にいささか疑問を持っていた。
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