あの加藤とあの課長
その後、残る1日をなんとかやり過ごした。

最終日の今日、きっと涙ながらに別れを惜しんで、朝まで愛を深め合うんだろう。


普段の私たちなら。



「大丈夫か…?」



何とも言えぬグッドタイミングでやってきた月のモノに顔を歪めながら頷く。



「俺、風呂入ってくるな。」

「うん…。」



私の頭を一撫でして、源は腰掛けていたベッドから立ち上がった。


今日の会議は鎮痛剤を飲んで何とか乗り切った。

明日はもう、帰るだけ。



「はぁ…。」



大きな溜め息を吐いて、天井を見上げた。


結局今回の出張中、源とシなかった。

でも実際問題、こんな気持ちでなんて嫌だったから、私としてはラッキーだったのかも。


なんて…思ってる自分が、大嫌い。



「甘ちゃん…か…。」



敏ちゃん、私はもしかしたら甘ちゃんよりも、もっとひどいかもしれないよ…。


私、欲張りなんだね。


源の腕の中だけじゃなくて、源の隣も私のモノじゃないと気が済まない。

それは恋人としてだけじゃなくて、仕事上でもそう。


なのに、私は向こうに帰れば側にいる人を求めてしまう。

要するに恵也に揺れて…。



あんなに大きな愛で包んでくれる源だけじゃ、満足できないのかな…。


欲張りで我が儘な私。
こんな私、大嫌い、最低。



痛むお腹を抱えて布団の中で蹲り、頬を伝う涙を拭うことなく。

気が付けば、眠りについていた。
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