あの加藤とあの課長
どうせ家はすぐ隣なのに。



「俺が心配やし。泊ってけ、な?」



そう言って、私の頭を撫でる。

付き合っていた頃と変わらないその仕草に、涙腺が緩む。



「あり、がと…。」



止めて。手を離して。
今の私は、弱いから。

その手を取って、甘えてしまう。


そっと俯くと、ギュッと目を瞑った。



「…なぁ、陽萌。」

「ん…?」

「……今、誰も彼氏おらんのやったら。」



パッと顔を上げると、真剣な目と目が合う。

その先の言葉が分かってしまうから余計に苦しくて。


引っ込みがつかなくなった涙が、ここぞとばかりに視界を覆う。



「俺と、付き合わん?」



駄目…。



「俺、もっかいやり直したいんや。」



止めて、駄目。



「あの時別れてへんかったらなんて、後悔したまま終わりたくないんや。」

「け、いやっ…。」



それ以上、言わないで。

次から次へと涙が頬を伝って布団に染みを作る。
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