あの加藤とあの課長
「ねぇ、君たち付き合ってるの?」



外回りに行った帰り道、その足でお昼ご飯を食べて会社に戻ることになった。

入ったのは食堂。


隣り合わせに座る私たちを交互に見ながら、高山課長が言った。



「まぁ、お陰さまで。」



と隣の恵也が、顔を上げることなくそう言った。

高山課長の眉がピクリと動いたのを、私は見逃さなかった。


そういえばこの人。
私のことが好きなんだっけ。



「ふーん?」



その声は、まさに皮肉たっぷり。

明らかに余裕を醸し出しているのは恵也の方。勝負はついている。


そんな2人を横目に、私は黙々と箸を進めた。


なんかもうどうでもいいよ、そういうの。

私はただ流れに身を任せて、流されるままにそれに従うだけ。


ずっとそうしてきた。

そう、それで、いいんだ。



「家も隣同士、お互い課長補佐。運命的な再会を果たして復縁ねーぇ。」



なんて言いながら恵也をジロリと見る高山課長。コイツ、性格捩曲がってそうだ。

そんな課長を微笑みで交わす恵也。



「そう言われると、何やロマンチックに思えてきますねえ。」

「……そう。」

「……。」



ちょっと、アホ臭く思えてきた。

それにしても、恵也も丸くなったもんだ。
あの頃の恵也なら間違いなくシカトだ。
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