あの加藤とあの課長
「食わなかったのは本当に時間がなくて後回しにしてたからだけど…。」



再び視線を逸らしてボソボソと言う源の体に回した腕に、力を込めた。



「なんだ…。」



私の口から漏れた声は掠れていて。

視線を私に戻した源と目が合った途端、どうしようもなく可笑しくなってしまった。



「ふ、ふふふ。」



急に笑い出した私を訝しげに見る源。



「私たち、やっぱり似た者同士だね。」

「は?」

「……私もね、眠れなかったの。」



そう告げた私を、驚きを隠さずに見つめる源。

そして、ふっと顔を緩めた。



「そうだな…。」



なんだか、馬鹿みたい。
何をやってたんだろう、私たちは。

しっかりと源に抱き付くと、その胸に顔を埋めた。



「今日は、久々にしっかり寝れそう。」

「…俺もだ。」



顔を見合わせて笑い合って、しっかりと抱き締め合って、眠りに就いた。



宣言通りしっかり眠れたのは、言うまでもなく。


翌日、源は検温に来た看護師さんに起こされるまで。

私はお見舞いに晋ちゃんが来るまで、ずっと目覚めることはなかった。



「2人して、どんだけ睡眠不足だったのよ。」



敏ちゃんにそう突っ込まれて、苦笑いするしかなかった私だけど。



「睡眠不足と言うより、陽萌不足だな、俺の場合は。」



そうサラリと言って退けた源に、私は赤面するしかなかった。


源が私不足だったなら、きっと私は、源不足だった。

…んだと、思う。
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