あの加藤とあの課長
しがみ付くように抱き付いて私の肩口に顔を埋めた源は、どこか弱気な雰囲気を漂わせる。


その腕に手を重ねると、トントンとリズムをつけて叩く。

本当に、どうしたんだろう。



「……。」



何かを考え込んでいるようで、何も言わない源。

源を待っている間に、なるべく肩を動かさないようにしながらコーヒーとココアを淹れていく。


そして口を開いた源の口からは、とんでもない言葉が出た。




「海外研修になった。」




ガチャンと、マグがぶつかる。
幸いなことに零れることはなかった。

今、なんて…。


源が顔を上げたのと同時に、源を仰ぎ見る。



「海、外、研修…?」



戸惑う私に、1つ頷く。

体が勝手に震える。
今度は源が、行ってしまう…?



「といっても短期だから、一月くらいだが。」

「一月…。」



ホッとして、体の震えが止まる。

そんな私に微笑みかけて、ゆるゆると頭を撫でる。



「相変わらず可愛い反応してくれるな、お前は。」

「なっ…。」



会社でなんてことを…!



「…大丈夫だ、すぐに帰って来れるから。」



腰に回した腕に力を込めて、私をギュッと抱き締める。
< 406 / 474 >

この作品をシェア

pagetop