あの加藤とあの課長
あの課長が冗談を言ったこと?
それよりも…、この、笑顔…?

……こんな人だったっけ。


悪戯っ子のように笑う彼に暫し放心する。



「腹減らないか?」

「あ、空きました。」



そう返事をした途端、お腹が心細げに鳴る。

思わずお腹を押さえると、噛み殺すように、けれど隠すことなく笑ってくださる課長。



「ちょうど昼飯時だ。何食う。」

「なんでもいいですよ。あ、ラーメンはスーツに跳ねると困るのでなしで。」



そう言うと、課長は「了解」と呟いてから何か考える素振りを見せる。



「お前、丼でも平気か。」

「全然大丈夫です、1人で入ることもありますから。」



課長は驚きながら駐車場に車を止めた。

丼屋さんに入ると、適当に頼んで、運ばれてきたそれに手をつける。



「お前はいろいろと意外すぎる。」

「へ?」



箸を止めて課長を見ると、課長は丼を見つめたまま口を開いた。



「ただ外見だけの女かと思えば仕事もバリバリにこなすし。」

「そ、そうですか。」

「かと思えば男癖悪いし。」

「…そうですね。」

「なのに幼い。」



私、誉められてるの? けなされてるの?

首を傾げてみたけれど、課長はそんな私に構うことなく話を続ける。
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