あの加藤とあの課長
「こんにちはー。」



お洒落なアトリエに足を踏み入れながらそう叫んだ煌に続いてアトリエに入る。



「ミナトさーん、加藤ですー、加藤 煌ですー。」



その叫び声に釣られるようにドタドタと走る音が聞こえる。



「はいはーい!」



奥の部屋からひょっこりと顔を覗かせたのは、雑誌でも何度か見たことのある顔。


整った甘めフェイスに、パーマを当てた明るい茶色の髪。ハットとスカーフがトレードマーク。

そして、懐かしい思い出の人。



「あー! 陽萌! 陽萌でしょ!? 久しぶりっ♪」



やっぱり……と思いながらも、仕事だと頭を切り替えて営業スマイルを浮かべる。



「お久し振りです、ミナトさん。」

「あれー? なんか固くない?」

「仕事中ですので。」



そう言った私を面白そうに眺めるミナトさん。



「あの、どういったご関係で。」



と、ミナトさんに圧倒されていた煌が言う。

やっぱり訊くのか。 まあ…気になるよね、普通に。



「俺、陽萌の元彼!」



と言いながら私に抱きつくミナトさん。恐らく、物凄い笑顔で。

ミナトさんで見えないけど、煌もなかなか驚いてるはず。
< 56 / 474 >

この作品をシェア

pagetop