あの加藤とあの課長
「陽萌も相変わらず…、ううん、なんか洗練されたよね。」



そんな言葉を聞いて、隣で煌が自分を抱き締めながら身震いした。



「それにしてもよく覚えてたね、私がコーヒー飲めないの。」

「んー? 当たり前でしょ。だって、陽萌のことだもん♪」

「…健在だね。」



甘い言葉も健在。

今まで、どれだけの女の子を勘違いさせて泣かせてきたんだろう。


……人のこと、言えないけど。


そのとき、ミナトさんのケータイがけたたましい音を立てて鳴り響いた。



「あ、ちょっとごめんね!」



そう断って電話に出るために部屋を出ていったミナトさん。



「…聞いてないけど、元彼なんて。」

「そんな睨まなくても。私だって、半信半疑だったもん。」



ミナトさん…湊(みなと)と付き合ってたのは、私が大学1年生の頃で、彼が大学4年生の頃だった。

約1年。



「あ、陽萌が初めて同棲した奴?」

「うん。」



後半は同棲してたな…、そういえば。

結局、与えられるだけの愛が苦しくて、私が逃げ出した。
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