あの加藤とあの課長
「どうしたの陽萌!」



オフィスに入った瞬間、晋ちゃんか私に突進してきてそう叫んだ。



「しー…。」



なんとかそう声を発すると、晋ちゃんは眉間に遠慮なく皺を寄せた。



「なんで。具合悪いの丸分かり。」

「だって仕事しなきゃ。」

「だからって!」



とてつもなく不機嫌な晋ちゃんに微笑みかけると、晋ちゃんは溜め息を吐いた。

かと思ったら、私をデスクに促す。



「今ココア淹れてきてあげるから。それとも紅茶がいい?」

「紅茶。」

「了解。」



そう言うと、晋ちゃんは颯爽とオフィスを出ていった。

じわじわと襲ってくる痛みと怠さ。


……私、死ぬんじゃないだろうか。



「加藤。」

「はい。」

「これ頼む。」



ドン、と机に置かれた書類の山を眺めてから課長を見ると、課長は目を合わせすらしない。

あれから数日。
どうしたもんか…。


それから晋ちゃんが淹れてきてくれた紅茶を飲んで、私は髪をいつも通りポニーテールにして、眼鏡をかけて仕事を始めた。
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