王に愛された女 番外編





 王の即位式と、王妃の即位式、そして二人の婚姻ノ儀が終わった。

 宴の会場全体を見渡せるバルコニー席に王と王妃が座っているのが見える。

「…立派になられましたな…王子――否、王様」

 ロッドは下から王を見上げ、呟いた。

 彼は笑顔で王妃と喋っているが、ロッドは彼が幼い頃から一緒にいたのだ。

 ロッドにはわかる。王が作り笑いを浮かべていることくらいは。

「…まだ、おツラいんでしょうな…」

 ロッドは呟き、それから重臣フィオーレの方へ向かった。

「フィオーレ様、この度はミィナ様が王妃になられたこと、心からお祝い申し上げます」

 銀青の髪を束ねた男が振り向く。

「あぁ、ロッドか。ありがとう」

 王宮内での仕事が溜まっているのか、前に会ったときよりやつれているように見えた。

「ロッド、ミィナの前に王妃候補がいたと聞いていたが、一体誰だったんだ?」

 ロッドは慌てて首を振った。

 王妃が即位したばかりなのに、死んだクリスティーヌの話などできないと思ったのだ。

「ぞ、存じ上げておりません」

「そうか」

 フィオーレは呟き、それから他の重臣のところへ歩いて行った。

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