誠─紅き華は罪人に祝福を与う─

第五話-渡辺の血と過去と-




――――――――――――――――
――――――――――――――




「・・・・」


「え、えっと・・・お久しぶり、ですよね?」


「え、あ、はい!!」




響にしては珍しくあづさを凝視していた。


何かに気づいたのか、珠樹を見て、土方に視線を移した。


珠樹も気づいてはいるが、見て見ぬフリをしている。


響は一人、途方に暮れたように忙しなく瞳を揺らした。




「あの、私・・・・鈴さん呼んできます!」


「何で!?」




今ばかりは奏に応える時間も惜しいのか、そのまま広間を出て行ってしまった。


響に悪意はない、ないのだが・・・。


奏の片手が虚しく宙に浮かんでいる。




「・・・・・・フッ」




残る近藤達は奏の背後から黒いオーラが見えて仕方がない。


響大好きの奏。


怨念に近いソレが向けられるのは言わずもがな、鈴一人である。


今回は、そして今回も、とばっちりとしか言いようのない鈴に、皆の同情が寄せられた。











< 32 / 59 >

この作品をシェア

pagetop