誠─紅き華は罪人に祝福を与う─




その否定の言葉すらも、自分に言い聞かせているようにしか聞こえない。


もどかしい。


こんな時、彼女の側に長く居続けた彼ならどうしただろう。


唯一、隣に立っていることを赦された彼ならば。


………不毛な考えだけれど。




「奏ちゃん」


「何ですか?絶対泣きませんからね?」




そこまで意固地になられると拒否されているみたいで嫌なんだけど。


苦笑しながら、目の前にある綺麗な黒髪をすいた。




「僕は奏ちゃんのこと、好きだから。それだけは忘れないで」


「…………」




きょとんとされるのにも、もう慣れた。


どこまでも鈍感だから。


あの頃と気持ちは微塵も変わらない。


君を揺り動かす栄太や桜花を羨ましい、なんて。


思っちゃ駄目かな?




「………………栄太と桜花」


「……………」


「間違いならいいと、思うんです。でも、私の勘は、間違いじゃないって言っている。悪いことだけはいつも当たるんだから」


「……………………」


「ナル」


「………………………」


「姿を全く見ないんです。そして私の悪い予感センサーも鳴り響いている」


「………………奏ちゃ…」


「まだ、教えないでください。もう少し……栄太達の件が片付くまで」




知ってしまったら、もう後には戻れない。


何で聞いてしまったんだろう。


聞かなかったら、今、ここで気まずい思いをせずにすんだのに。


君に気にかけてもらえることに、嫉妬せずにすんだのに。


この世は、とても理不尽だ。


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