哀しみの音色
「神様は、いじわるだね……。
まさか、樹からそんな言葉を言われるなんて……」
「莉桜?」
俺には、莉桜が言おうとしていることが理解出来なかった。
そういえば、初めて莉桜に会ったとき、同じように莉桜に告白したやつがいたけど、その時とは断り方が全然違う。
あの時は、誰もが腹立つような断り方をしていた莉桜。
だけど俺からの告白は、まるで何かに怯えているように拒絶している。
「樹……」
莉桜が自分の両手で肩を抑えながら、俺の名を呼んだ。
「あたしなんか、やめたほうがいいよ」
それは、まるで自分に吐き捨てるような言い方だった。
「どうしてあたしなの……?」
顔を上げ、俺を見つめる莉桜。
その瞼には、うっすらと涙がたまっていた。
「……わかんない。ただ……」
「……」
「その悲しい目を、どうにかしたいって思うんだ……」
とてもとても悲しい目。
最初は冷たい目をしていると思っていたけど、本当は違って……
もっと奥に秘めた、自分すらも信じられないといったような悲しい瞳だった。