哀しみの音色
「……お前、反則」
「え?」
照れを隠し切れなくて、つい口元を手で隠しながら目を泳がせた。
「今、めちゃくちゃ抱きしめてやりたくなったじゃねぇか」
「……」
俺の言葉に、莉桜は少しだけ目を丸くさせて俺を見上げた。
だけどまた、すぐに微笑んで……
「二人きりになったらね」
と、付け足した。
あー、やっぱりこいつには敵わねぇ……。
そのとき……
「………莉桜…?」
どこからか、莉桜の名前を呼ぶ声がした。