哀しみの音色
 
「暗いねー」


頼んでいたコーヒーが届くと、浩介さんは苦笑しながら言う。
俺は慌てて、「そんなことないです」と否定した。

だけど浩介さんはそのまま苦笑しながら


「……知っちゃったんでしょ?
 莉桜の元彼の姿」

「……」


今一番触れてほしくないことを、突っ込んできた。

俺は何も言えず、ただうつむいた。


「やっぱショックだよな……。
 自分が元彼に似ているなんて……」

「……」

「正直、俺もすげぇ驚いた。
 お前に初めて会ったとき、あまりにも蓮にそっくりだったから……」


浩介さんは煙草を取り出すと、カチッと火をつけた。

 
< 97 / 164 >

この作品をシェア

pagetop