家族
 月明かりに照らされて泣いている雪江はとても美しかった。その美しさは春夫に、この場から去る事を許さなかった。
 惚れている女性が理由は分からないが泣いている。それを美しいと思ってしまう自分に、春夫は罪の意識を感じた。
 春夫の足元の土がジャリッと音を立てた。しまったと思った。
 はっと、雪江が顔を上げた。
「春夫君・・・」
 雪江は驚いた顔をした。
 春夫はバツが悪そうに頭を下げた。
 雪江は黙って春夫を見つめた。涙で潤んだ瞳で見つめられ、春夫は思わず目を逸らした。鼓動が早くなる。何があったのか聞きたかったが、聞けなかった。言葉が出ない。自分を情けなく感じた。

< 24 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop