かえるのおじさま
(まるっとガキじゃないか)

夜店の前で駄々をこねて転がる子供のような、みっともない所有欲に満たされている。

それでも、年を考えれば頑迷なことを言うわけにはいかない。
だから……

「美也子、腕輪を買おう。結婚のしるしの、小さな石がついたやつだ。お前につけて欲しい」

天幕の向こうで、ちゃぷんと湯の跳ねる音がした。

「俺と結婚してくれ……美也子」

それに答えて聞こえた声は、優しく、温かく、何よりも近くで鳴ったような、そんな声音であった。

「ギャロ、私はとっくに、『ギャロの女房』だよ」

「ああ、そう……だな」

布一枚を通して、美也子の気配を感じる。
この天幕をめくれば触れれるほど近くに、愛する女が居てくれる。

幸せそうに下瞼を引き上げて、ギャロは喉を膨らませた。
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