ありがとう。
「ありがとう。」






ーーーーーーーーーー

《 ?? side》





「ウソッ!」




朝ご飯を食べていた私の手から食パンが落ちそうになる。





「お母さん、どうしたの〜?」




今年でちょうど25歳になる娘が声をかけてくる。





「お父さん呼んできて。」




普段は、東京で1人暮らしの娘も昨日からは実家の私たちの所に帰ってきていた。





「お父さーん!」





ガチャ



「なんだよ。朝から。」


私の夫はあいも変わらずの性格だ。




「お母さんが呼んだの〜。」



「ちょっと、このニュース観た?!」



私は急いで今までやっていたのと同じニュースをやっている番組を探す。





あっ、これだ。




『今日の深夜1時ごろ、医師の一ノ瀬 奏さんがお亡くなりになりました。わずか46歳でした。』




「は?」




『一昨年、44歳の若さでノーベル医学賞を受賞した一ノ瀬さんは心臓病のことを研究していて、心臓のスペシャリストという異名を持っていました。』



「奏・・・。」



「お母さんたちの知り合い?」




『一ノ瀬さんと学生時代から交流の深かった、歌手のSIIKAさんは

「奏先生は自分の一生を医療だけに捧げていました。それは彼の思いが詰まった夢で、ある人の願いでした。奏先生が歩んだ一生は、素晴らしく輝いたものでした。ありがとう。」

と涙を流しながら語りました。
葬式は明日の午前に行われる予定です。ご冥福をお祈りします。』







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