溺愛マイヒーロー
「……あれー? 琴里?」

「え? あ、ゆーすけ、」



放課後、部活に向かおうと校内の中央階段をおりてきた俺がふと階段下に目を向けると、中庭へと続く扉の前に、Tシャツにハーフパンツ姿の琴里がいた。

思わず声をかけると、俺の名前を呟きながら振り返る。

そしてそんな彼女の目の前には、それほど大きくもないひとつのダンボール箱。



「何これ、部の備品とか?」

「ん。生徒玄関から出るより、こっちのが近いから……」



言いながら琴里はドアを開けてストッパーで固定して、そのダンボールを持ち上げようとする。

俺は片手を伸ばし、それを制した。



「貸してみ、俺持ってくから」

「あ、」



屈みかけた彼女の横から、ひょいっと箱を持ち上げる。

うお、やっぱ見た目のわりに意外と重い。
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