鈴音~生け贄の巫女~



「さぁ、見てみろシン。この場所、俺と凛が鉄格子の中にいる。逆に、どうこうできるのは俺だけだ。……そうは思わないか?」


「……何が言いたい」


「おいおい、少しは頭を使ってくれよぉ。……こいつを、凛をここから出してやる。そう言ってんだ。わかるか?俺が、どうやってここに姿を現したと思う?ここに入れて、出る事が出来ないなんてあると思うか?」


諭すようにゆっくりと、バカにするように少しばかり高めの声で、言う五木にイライラしている余裕はなかった。


「……何?それは協力、か?」


珍しく、シンが凛以外の者の前で驚きの感情を晒す。

それほどまでに意外な事であった。


「あぁそういうことだよ人殺し。俺は二度同じことを言うのが嫌いだからなぁー……一回で理解してくれて良かったよシン」


「……っ、綾香のことは」


"人殺し"


何気無く会話の中に組み込まれたその単語に、僅かシンが反応した。

近くにいた凛のみ、シンの体が強張ったことに気付くだろうか?

とはいえ、五木に気づく様子はない。


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