鈴音~生け贄の巫女~


しゃべれるのかという、些か感心や安堵に似た雰囲気を醸し出していたかもしれない――……と言うのは、凛は目隠しをされた状態であるが故に確かな事ではない。


ともあれ、この状況においてまずは相手の質問に答えて名を名乗るべきと踏んだ凛はその為に喉を震わす努力をした。


恐怖と、それに加えて疑問や怒りに似た混沌の感情は。

それを邪魔するばかりで、少しでもそれを和らげるにはと原因である男へ手探りで手を伸ばす。


そうして触れた布は着物の生地だったろうか、あまり良いものではないが使い古されているであろうそれは柔らかくてさわり心地が良かった。


「なんだよ」


そう言う男の声色はどこか険が取れ、また生地の柔らかさに触れて些か安心した凛は一度息を吐く。



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