鬱になれる短編集
「あれがほしい」

フードを被った少女。
少女は崖上の若菜を指差し言った。視線は若菜に合わせたまま。「のぼって」とも言った。
しかし少年は、ガケがたかくてのぼれない、と言った。膝が微震しているように見えた。

どきょうのないおとこね、少女が冷たくそう言うと、少年は一瞥した後、崖を登り始めた。
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