磁石な君とマグネット

実行委員長からの指令

意味わかんない。


それがあたしの率直な気持ち。



「なんであんたと荷物運びやってんの?」



「それは俺が聞きてぇよ・・・」



気だるそうに答える男――瀬永唯だ。


あたし、黄崎涼子はなぜか。

宿敵、瀬永唯とペンキやらなんやらの荷物運びをしている。


どうして二人でこんなことをしているのか。


その理由は、今朝のLHRの時間に遡る――・・。



***



「えー、9月にはさまざまな行事が行われる。それは、他校はもちろん、この架翠も例外ではない!」



暑い・・・。


6月の初め、いわゆる梅雨という季節に、あたしは悩まれつつあった。

それはあたしだけではない。


クラス全体がそうである。


そんな中、このクラスの担任である、尾口(オグチ)だけは違った。



「その9月!一番に行われる行事が、体育祭だ。勉学ばかりのこの架翠に唯一、身体を動かす機会のある場だ!」



尾口は、一言で言えば暑い男だ。

もう、いらないよね。そういう設定。
ただでさえ暑いのに。

いかにも青春しようぜ!的なオーラムンムンじゃないですか。


あたしは夏、比較的消極的になる。



尾口の話に耳を傾けつつも、机にぐでーんとうつ伏せになる。

前髪が額に張り付いてじゃまだ。


机のひんやりとした、心地よい冷たさにやられる。
そしてウトウトと、レム睡眠に入りそうだったとき。



「―――――そ・こ・で・だ!!」



キィ――――ン!


み、耳がっ!

あたしはいきなり声量が上がった、尾口の声にビクッと肩を震わせる。
もう少しで眠りそうだったのに。

再び暑さがあたしに舞い戻る。



「実行委員を決めた!わかったか、黄崎!!」



・・・は?

なんであたしの名前が呼ばれるんだろうか。


まぶしいくらいの担任の笑み。

いつのまにか、眠気なんてどこかに飛んでいった。


あたしが寝そうだったときに、何かが決められていたようだ。



「え・・・と?」



困っているあたしにあの腹立つ声がひとつ。



「ちゃんと聞いとけよ。黄崎サン、体育祭の実行いいんなんだってぇー。がんばってね?“主席”サン?」



「はぁ?・・・ちょ、どういうことですか、先生!」



尾口に向かって、睨みを利かせて聞くと、尾口は冷や汗を垂らしていった。



「だからな!主席と次席は二人で2、3年生と一緒に実行委員をやるんだ・・・」


「「は?」」



今度は、隣の瀬永唯も声をあげた。

あたしとは、別の意味で。
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