寮の夜は甘い夜。

揺れる思い。






「ねー、楓くん、好きじゃないんでしょ?」



裕司が後ろ向きに歩きながら小首を傾げる。



「え?…う、うんっ」







勢いで返事をしたけど実は自分でもわからない、なんて。






絶対認めたくないけど。





「好きでもないのにキスするんだったらさ、俺ともしてくれる?」





「………はあ?」





無茶だっ




私はただ夜が怖いからしてもらってるだけで、昼間とか、関係ないし…





でもそんなこと言いたくないし…




ピ、ピンチッ!






「ねーえ、いいっしょ?」






「よ、よ、よ、よいくなく…」




「…日本語喋ってる?」







なんなのコレどうすりゃいいの!?




裕司はジリジリと近づいてくるし断る理由も言いたくないし…




これっ、されるパターン!?





「ま、まじでー…」






「ん?なあに?」





「あっいや、うん。」




ご、ごまかさないと…




「あ、いいんだ。ありがとね」





「え!?ちがっ、そうゆうんじゃ」





重なる唇。




熱を帯びたソレは楓よりも少しカタイ。





…ちょっと今の言い方エロかったかも。






いや、しかし時折動く裕司の唇はやっぱり少しカタくって。





楓は柔らかいんだよなあ、なんて。





こんな時まで楓のことを考えてしまう私はどうしたというんだろう。





「………っん」






「あ、苦しかった?ごめん。」





裕司は謝りつつもキスをやめようとしない。





く、苦しいんだけど…




「…にやってんだよ」






裕司がその声に反応して顔をあげる。





「なーんだ、来ちゃったの?喧嘩中なんじゃ?」





「あ゛?ざけんなよ」





聞いたことある声。

聞きたかった声。



その声の主を恐る恐る確認すると…



「………かっ、楓!?」




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