片恋の君


私はうんともすんとも言えないでいると。


「香織ー、いくよ!?」


中山さんは友達に呼ばれて、

「お願いね!」

と、私の返事なんてお構いなしに去っていった。


「はぁ…」


本当、私はダメな人間だな。

嫌とも言えないし。


ん…。

嫌とか思うのはおかしいか。

祐介はただの幼馴染。

それ以上でもそれ以下でもない。


いつも一緒にいるんだから、意識なんてしたことないもの。




「ナツ…、話終わった?」


「あ、うん…」


中山さんが遠ざかったあたりで、祐介が私に声をかけてきた。

なんも知らない祐介はのんきにあくびをしながら。


そんな祐介の顔を見てたら、ますますモヤモヤが募る。


今まで私の知る限りでは彼女なんていたことのない祐介が、もしも中山さんに告白されたらどうするんだろうか。


さすがに、あんな可愛い子に言われたら付き合うのかな?





ーーチクリ…





「ん…?」



今まで感じたことない痛みが胸に走る。


「どうした?」


「え。ううん!なんでもない」



それは一瞬にして収まったから私は気のせいだと思うことにした。







< 3 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop